家賃を1年前払いすると節税にはなる。だが・・
家賃を1年前払いすることで、税金を安くしましょう、という話は、あちらこちらで紹介されていますし、税理士でも節税の1手段として使っている人が多いです。
でも、その効果はあるのでしょうか?
結論からいうと、下記のとおり「メリットは(ほとんど)ない一方でデメリットだけがある」節税手法です。
- 税金は減るが、手元に残るお金はそれほど変わらない
- 大家さんが倒産した場合や、引っ越したくなった場合に支払済みのお金が返金されないリスクがある
ですので、私は、この節税手法をするべきではない、と思っています。
家賃を1年前払いすることで得られる節税額は?
例えば、12月決算の会社で、毎月の家賃を100,000円としましょう。
そして2010年12月に利益が出過ぎた!といって、向こう1年分の1,200,000円の家賃を払った。
この場合の節税額はいくらになるでしょうか?
本来ならば、毎月100,000円×12ヶ月=1,200,000円の家賃であったのが
↓
前払い後は、毎月100,000円×11ヶ月+1,200,000円(12月の納付分)=2,300,000円の家賃計上ができます。
経費が、2,300,000円-1,200,000円=1,100,000円増えています。
様々な税金合算で税率を40%程度とすると、2011年2月の税金納付時の法人税等は、1,100,000円×40%(法人税等の合計税率)=440,000円減少します。
なんだか、得した気分ですね?
家賃を1年前払いするとお金は増えるのか?
でも、問題はここからです。
確かに、税金は減っています。
でも、家賃を前倒しで支払っているのですから、その分、手元のお金は減っていますよね?
税金が下がる効果と、家賃を前倒しで支払ったのとの差引で、果たして得をしているのでしょうか?
まず、家賃を前倒しで払った場合の入出金をみて見ましょう。
- 2010年12月
- 家賃支払1,200,000円
- 2011年2月
- 節税による税金支払減 △440,000円
- 2011年12月
- 家賃支払1,100,000円
- 2012年2月
- 何もなし(※2年目以降は節税効果0円のため)
次に、家賃を毎月払っていった場合の推移です。
- 2010年12月
- 家賃支払 100,000円
- 2011年1月
- 家賃支払 100,000円
- 2011年2月
- 家賃支払 100,000円 ※節税効果は0円
- 2011年3月~2011年1月
- 家賃支払 100,000円(毎月)
- 2012年2月
- 家賃支払 100,000円 ※節税効果は0円
- 2012年3月~
- 家賃支払 100,000円(毎月)
家賃を1年前払いしても、お金が増えるわけではない
さて、それでは、上の結果を表にして並べてみましょう。
上の支払スケジュールに基づき、支払額の累計を表にまとめると、次のようになります。
| 月 | 12ヶ月前払時(A) 支払額累計 | 毎月支払時(B) 支払額累計 | 差額(C)=(A)-(B) |
|---|---|---|---|
| 2010年12月 | 1,200,000円 | 100,000円 | 1,100,000円 |
| 2011年1月 | 1,200,000円 | 200,000円 | 1,000,000円 |
| 2011年2月 | 760,000円 | 300,000円 | 460,000円 |
| 2011年3月 | 760,000円 | 400,000円 | 360,000円 |
| 2011年4月 | 760,000円 | 500,000円 | 260,000円 |
| 2011年5月 | 760,000円 | 600,000円 | 160,000円 |
| 2011年6月 | 760,000円 | 700,000円 | 60,000円 |
| 2011年7月 | 760,000円 | 800,000円 | △40,000円 |
| 2011年8月 | 760,000円 | 900,000円 | △140,000円 |
| 2011年9月 | 760,000円 | 1,000,000円 | △240,000円 |
| 2011年10月 | 760,000円 | 1,100,000円 | △340,000円 |
| 2011年11月 | 760,000円 | 1,200,000円 | △440,000円 |
| 2011年12月 | 1,960,000円 | 1,300,000円 | 660,000円 |
| 2012年1月 | 1,960,000円 | 1,400,000円 | 560,000円 |
| 2012年2月 | 1,960,000円 | 1,500,000円 | 460,000円 |
| 2012年3月 | 1,960,000円 | 1,600,000円 | 360,000円 |
| 2012年4月 | 1,960,000円 | 1,700,000円 | 260,000円 |
| 2012年5月 | 1,960,000円 | 1,800,000円 | 160,000円 |
| 2012年6月 | 1,960,000円 | 1,900,000円 | 60,000円 |
| 2012年7月以降 | 省略 | 省略 | 前年同月と同額 |
以上の表からわかることは、次の通りです。
- 家賃を一括前払いしたほうが、現金残高が多くなるのは、毎年7月~11月の5ヶ月間だけ(※差額欄が赤字になっている部分です)。
- その他の月(12月と1月~6月)については、家賃を一括前払いをしてしまうと、かえって自由に使えるお金が減ってしまう。
つまり、家賃を一括で1年分前払いしたとしても、「資金負担が少なくなるわけではない」ということです。むしろ、資金負担が増えてしまう月のほうが多いのです。
家賃を一括前払いすることにより新たに抱えるリスク
家賃を一括前払いすることにより、新たに抱えるリスク要因もあります。
例えば、1年分前払いしたけど、3ヶ月目で移転したくなった、という場合。
すでに払った分のお金を取り戻せる契約になっているのかどうか?
取り戻せる契約になっていなければ、9ヶ月分の家賃がムダになってしまいます。
また、お金を取り戻せる契約になっていたとしても、大家さんに返せるお金がなければ、お金を取り戻すことはできません。
※最近は、こういう大家さんは意外に多いようです
その場合には、引越をしたくても、そのオフィスに留まるしか選択肢がなくなってしまうおそれがあります。
節税としてもイマイチな上にリスクを抱えたいですか?
上で書いたとおり、(少なくとも短期的には)この節税手法は意味がないことが大半です。
その上、事務所を自由に移転できなくなるおそれが生じるのです。
ですので、私は、この節税手法は、おすすめしません。
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